はなごよみ つきごよみ くらしごと
第33回『旧暦長月朔日(新月)』
野紺菊 ノコンギク
花言葉:長寿と幸福 忘れられない想い
心の奥にそっと閉じ込めた
忘れられない想いはありますか?
野紺菊は日本各地で見られる
夏から冬のはじまりに咲く山野草です
いわゆる野菊と呼ばれる
日本生まれの
ちいさなうすむらさきの花
強い直射日光が苦手で
仲間たちと寄り添って咲きます
秋に盛りを迎えて咲き誇る野紺菊
小さき者たちの儚さと力強さは
優しいエネルギーを届けてくれます
旧暦では晩秋がはじまりました
心に秘めた想いを
澄んだ秋の夜空にそっと解き放ち
軽やかに涼やかな季節を
楽しみましょう
次回10月13日
上弦の半月のころに
お届けいたします
はなごよみ つきごよみ くらしごと
第31回『旧暦葉月十五日(中秋の名月)』
曼珠沙華 マンジュシャゲ
花言葉:情熱 思うはあなた一人
昼と夜の長さがほぼ等しくなる
秋分の日
前後3日を加えた7日間は
秋の彼岸として
多くの方がご先祖を敬い 偲びます
西にあるとされたあの世と
もっとも近づく日と考えられています
そんな秋の彼岸のころ
曼殊沙華が美しく咲きます
サンスクリット語で
天界の花という意味がある
曼殊沙華
あの世とつながる時期に咲き
根に毒を持つことから
彼岸花 幽霊花 毒花
すこし背筋が凍る名を合わせ持ちます
儚い夢物語のような
美しい赤き花
中秋の名月
冴えわたる月明りのもと
頬をなでる
ひんやりとした秋風を感じる夜に
神秘的な姿を愛でる
ちょっと変わった月見も
一興かもしれません
次回、9月29日
下弦の半月を迎えることに
お届けいたします
はなごよみ つきごよみ くらしごと
第30回『旧暦葉月八日(上弦の半月)』
萩 はぎ
花言葉:内気 柔らかな心
万葉集の中で
もっともたくさん詠まれた植物
いにしえの人々にとって
秋の花といえば
垂れた枝の先に
赤紫や白い可憐な花を咲かせる
萩でした
「令和」の語源として
一躍 時の人となった
奈良時代の歌人
大伴旅人(おおとものたびと)
かの人は
ことのほかこの花を愛し
この世をさる前には
“萩の花は咲いているか”
と問うたとか
萩の花が咲くころ
求婚時期と重なりよく鳴くことから
万葉集では
ともに詠われることが多いのが
鹿と萩
『我が岡に さ雄鹿 き鳴く 初萩の
花妻とひに き鳴く さ雄鹿』
(万葉集 巻8-1541)
これは鹿が萩の花を妻とするため
切なく鳴く様子を詠んだ
大伴旅人のちょっと不思議な
美しい秋の世界です
日ごと深まる秋の風情を
こころゆくまで堪能したい
秋はそんな気持ちになります
次回、9月21日
中秋の名月のころ お届けします
はなごよみ つきごよみ くらしごと
第29回『旧暦葉月朔日(新月)』
薄 芒 すすき
花言葉:活力 心が通じる
尾花とも呼ばれる すすき
秋の七草のひとつです
旧暦の八月=葉月(はづき)の新月
仲秋がはじまりました
この月が満ちると
中秋の名月と呼ばれます
空気が冴え
夜空の星や月がキラリと輝く秋
日中のあたたかさは
まだ夏を思い出しますが
夜空を眺めると
秋がまたひとつ深まる様子を感じ
どこかきゅんと切なくなります
物憂げな心を呼び起こす秋
美しく広がるすすき野
風にゆれながらも
スッと背筋を伸ばして佇む姿に
凛とした強さを感じます
セイタカアワダチソウとの
生き死にの戦いを続け
今はともに生きる道を歩むすすき
生命力の強さが
花言葉「活力」に繋がっています
秋は冬に向けて
力を蓄えるとき
実りの季節です
月が満ちてゆくのを日毎眺め
生きる力を
自らの内にも感じましょう
次回9月14日ころ
葉月の上弦の半月が訪れるころに
お届けいたします
はなごよみ つきごよみ くらしごと
第28回『旧暦文月廿三日(下弦の半月)』
竜胆 リンドウ
花言葉 :あなたの悲しみに寄り添う 勝利
竜胆の花を想うとき
いつも思い出す一節があります
物語「銀河鉄道の夜」の中で
天の野原に広がる紫の竜胆を見て
「もうすっかり秋だねぇ」
と声を漏らす
カンパネルラの言葉です
熱気を残しながらも
秋に向かう
どこか切ない夜
悲しみに寄り添う
竜胆は
暗闇に花を閉じてなお
あたたかく
光を灯してくれるようです
世界中で古くから
薬草として
人々の力になっていた竜胆
病に打ち勝つ意味をこめ
「勝利」という
花言葉をもちます
人々に寄り添い 病に勝利すする
竜胆の力に導かれますように
次回、9月7日
葉月の新月にお届けいたします