はなごよみ つきごよみ くらしごと
    第34回『旧暦長月八日(上弦の半月)』

     

    菊 きく
    花言葉:高貴 高潔 高尚

    明日は旧暦九月九日
    この日は日本で江戸時代に制定された
    五節句の内

    重陽(ちょうよう)の節句

    古来「陽=奇数」を良き数として
    奇数の重なる日を吉日としていました

    陽の重なる日

    菊の花の盛りのこの頃

    菊の花に夜通しかぶせた真綿に
    朝露をふくませ
    顔やからだを清める

    老いを遠ざけ
    長寿をもたらすと

    そう信じられていました

    まだ暑さの残る新暦の9月9日

    旧暦の重陽のころには
    朝晩はひやりとし
    菊の花についた朝露が
    きらりと輝きます

    季節の表情を確かめ
    秋の深まりに
    心を寄せる

    そんな暮らしも
    たのしいものですね

    次回10月20日
    旧暦長月満月 土用の入りにお届けします

     

    はなごよみ つきごよみ くらしごと
    第33回『旧暦長月朔日(新月)』

    野紺菊 ノコンギク
    花言葉:長寿と幸福 忘れられない想い

    心の奥にそっと閉じ込めた
    忘れられない想いはありますか?

    野紺菊は日本各地で見られる
    夏から冬のはじまりに咲く山野草です

    いわゆる野菊と呼ばれる
    日本生まれの
    ちいさなうすむらさきの花

    強い直射日光が苦手で
    仲間たちと寄り添って咲きます

    秋に盛りを迎えて咲き誇る野紺菊
    小さき者たちの儚さと力強さは
    優しいエネルギーを届けてくれます

    旧暦では晩秋がはじまりました

    心に秘めた想いを
    澄んだ秋の夜空にそっと解き放ち
    軽やかに涼やかな季節を
    楽しみましょう

    次回10月13日
    上弦の半月のころに
    お届けいたします

     

    はなごよみ つきごよみ くらしごと
    第32回『旧暦葉月廿三日(下弦の半月)』

    シュウメイギク 秋明菊

    花言葉:薄れゆく愛 褪せていく愛 淡い思い

    秋になると風に揺れる白い花

    秋明菊の花言葉が

    どこか悲しく切ないのは

    ギリシア神話の悲話が

    由来となっているから

    華奢な姿ですが

    厳しい環境でもたくましく育ちます

    夏の終わりから

    冬のはじまりまで

    白だけでなく

    赤紫や薄紅色

    可憐な顔をのぞかせる

    秋明菊

    空気が1日1日冷たくなり

    切なさも深まる季節

    すらりと伸びた茎の先に

    そよそよと花開く秋の花に

    心のあかりを

    灯してもらいましょう

    次回は10月6日 晩秋のはじまり

    旧暦9月新月のころにお届けいたします

     

    はなごよみ つきごよみ くらしごと
    第31回『旧暦葉月十五日(中秋の名月)』

     

    曼珠沙華 マンジュシャゲ
    花言葉:情熱 思うはあなた一人

    昼と夜の長さがほぼ等しくなる
    秋分の日

    前後3日を加えた7日間は
    秋の彼岸として

    多くの方がご先祖を敬い 偲びます

    西にあるとされたあの世と
    もっとも近づく日と考えられています

    そんな秋の彼岸のころ
    曼殊沙華が美しく咲きます

    サンスクリット語で
    天界の花という意味がある

    曼殊沙華

    あの世とつながる時期に咲き
    根に毒を持つことから

    彼岸花 幽霊花 毒花
    すこし背筋が凍る名を合わせ持ちます

    儚い夢物語のような
    美しい赤き花

    中秋の名月
    冴えわたる月明りのもと

    頬をなでる
    ひんやりとした秋風を感じる夜に
    神秘的な姿を愛でる

    ちょっと変わった月見も
    一興かもしれません

    次回、9月29日
    下弦の半月を迎えることに
    お届けいたします

    はなごよみ つきごよみ くらしごと
    第30回『旧暦葉月八日(上弦の半月)』

    萩 はぎ
    花言葉:内気 柔らかな心

    万葉集の中で
    もっともたくさん詠まれた植物

    いにしえの人々にとって
    秋の花といえば

    垂れた枝の先に
    赤紫や白い可憐な花を咲かせる

    萩でした

    「令和」の語源として
    一躍 時の人となった
    奈良時代の歌人

    大伴旅人(おおとものたびと)

    かの人は
    ことのほかこの花を愛し

    この世をさる前には
    “萩の花は咲いているか”
    と問うたとか

    萩の花が咲くころ
    求婚時期と重なりよく鳴くことから

    万葉集では
    ともに詠われることが多いのが

    鹿と萩

    『我が岡に さ雄鹿 き鳴く 初萩の
    花妻とひに き鳴く さ雄鹿』
    (万葉集 巻8-1541)

    これは鹿が萩の花を妻とするため
    切なく鳴く様子を詠んだ

    大伴旅人のちょっと不思議な
    美しい秋の世界です

    日ごと深まる秋の風情を
    こころゆくまで堪能したい

    秋はそんな気持ちになります

    次回、9月21日
    中秋の名月のころ お届けします

     

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